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副学長先生にインタビュー(教員おすすめ本 その2)

こんにちは、図書館です。みなさん新年を迎えいかがお過ごしでしょうか。
今年も元気で大学生活を充実させていけたらいいですね。
みなさんの成長に是非とも図書館をご活用くださいね。
冬休みを終え、もうすぐ後期試験が始まりますが、しっかり準備はできておられますか。
試験対策への図書などお気軽に相談してください。スタッフ一同、お待ちいたしております。
今回は、山岸副学長先生室に参上させていただき、医師から教師になられた軌跡、おすすめの本、学生へのメッセージなどをお伺いしました。副学長先生、お忙しいなか、貴重なお時間をありがとうございました。

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研究室前、クリスマスリース横の掲示板に、山岸先生ご執筆の論文、授業のレジュメがいつでも学生が手にとり閲覧・勉学できるようオープン・スペースが常時備えられています。

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Q:「副学長先生は、これまでどのようなご本がお好きだったのですか?これまでお読みになられたご本やおすすめの図書はございますか?」

A:「私は、小学生のときから、文学的な本というよりも百科事典や説明書などをよく読んでいました。
理系人間だったと自覚しています。青年期には、歴史書など戦記ものをよく読むようになりました。
特に、司馬遼太郎の『坂の上の雲』が好きでした。
また、中高一貫の甲陽学院の同級生だった、元警視総監池田克彦氏の書き下ろした雑学関連の本もよく手にしています。
最近は、『キリンの解剖記』を面白く読みました。」

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池田氏のご本は上記の他に『知恵の話』『うんちくコラム』など数冊発刊されているそうです。キリンの首と人間の首の関節の数は何と同じだと、山岸先生に教えていただきました。手に取って読んでみたくなるような本ばかりです。
図書館にも蔵書がありますのでみなさん、是非いらしてください!


Q「山岸副学長先生は、金沢大学医学部をご卒業後、大阪大学医学部内科医員、国立循環器病センター内科心臓血管部門などさまざまな重責を担われ、金沢大学循環器内科教授、金沢刑務所法務省矯正局医官から現在本学の副学長であられます。お父上さまも医師だとお伺いいたしておりますが、息子に同じ道をと期待されていたのでしょうか。小さい頃からお父上さまの書棚に囲まれて自然に医師を目指されたのでしょうか。」

A:「父と淡路島によく遊びに行っておりました関係で、船乗りになりたいと強く思うようになり、実際神戸商船大学の願書を取りよせ、受験する予定でした。」

Q:「船乗りになられなかったことに後悔はありませんか。」

A:「今では、医師になり、教育・研究に携わることが自然だったと思えます。先日、父の遺品を整理しているときに父が読んでいた解剖学の著書がありました。
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左の紺色のご本は、父上さまが学んだ解剖学、右の黄色のご本は山岸先生が学ばれた解剖学のご本。
1938年から50年ほどの間隔がありますが、驚くべきことに精密な脳の構造は精密に説明されてほとんど差異がないとのことです。
上段の赤の下線に山岸先生の勉学の足跡に引き込まれます。
知的財産は確実に継承されているのですね。
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Q:「これまでのお仕事で印象的な出来事をお教えください。」

A「金沢で開催された第81回日本循環器学会学術集会に高円宮妃殿下のご臨席を賜りご祝辞を頂戴したことです。」

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当時、日本循環器学会理事として奔走されたとのことです。
研究室内の至る所に、尊い命と向き合い、命を助けて来られた副学長先生の軌跡・歴史が刻まれています。

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Q「副学長先生は、学生にどのような人になってほしいと思いますか。学生に伝えたいことは何ですか。」

A:「学生にはそれぞれの持ち場で、アイデンティティを確立して欲しいと強く願い教育に従事しています。
大学で自身の適正を見極め、他の人と分かち難い独自のものをみつけ、確立し、社会に出て活躍して欲しいと願っています。」

〈インタビューを終えて〉
山岸副学長先生に、いろいろお伺いする最後に、司馬遼太郎の『坂の上の雲』の話に戻りました。
私自身もかつて愛読していた著書の一つでした。
「明治維新後、明治の時代を必死に駆け抜けた人々、近代国家を形成した人々の多くは、私事よりも公を大切にし、勤勉でよかったですね。あの当時の姿から今という時代をみると、何だか現代の若者は少し物足りなくないですか?」と私の質問に、意外なご返事が副学長から返って来ました。
「私は、明治維新がなく、江戸時代のように鎖国のままではどうなっていたかと、よく想像を巡らします。
富国強兵で他国と争うのが、人々の幸福という観点からは疑問です。
争うよりも、外交交渉で戦争を未然に防ぐべく全力を尽くすべきではなかったかと考えます。」
驚きました。
「昔の人は立派だった。今の若者は・・・」との返答を期待していたからです。
明治維新は自明のことと受け止めていた私には、衝撃の視点を与えていただきました。
戦争はしない、平和な生活をする方策を探るために、もっと人として知恵を出さなければという思い、命を大切にするべきだとの思いを改めて気づかされました。
そのような理念をベースに研究・教育に邁進されておられる姿に感銘を受けました。
すばらしいと思いました。
山岸先生が大切にされている言葉があり、ご紹介いただきました。
「賢者は歴史に学び、愚者は己の経験に学ぶ。」です。

後日、山岸先生が学ばれた母校の甲陽学院のことが知りたくてウィキペディアを検索しました。
山岸先生と同級生の池田氏が代表的な卒業生に名が掲載されていました。
学院の教育方針には、「気品高く教養豊かな有為な人材を養成することを目的とし、孝養心を秘めた識見高い青年の輩出を目指す。銘酒の醸成のように、焦らず競わず衒わず長期的展望に立った人間教育を方針とする。イギリスのパブリックスクール、イートン・カレッジやハーロー校に通じる精神を持つといわれる。」とありました。

副学長先生が今なお、その精神を具現化されて日々教育・研究にあたられておられるのではと僭越ながら思いを馳せることができました。

(画像は出版元の使用承諾のもと掲載しています)