植松ゼミ第9回見学会は、平城遷都1300年で盛り上がっている奈良の薬師寺・唐招提寺に決めました。初めに訪れた薬師寺は、天武9年(680)に天武天皇が皇后(後の持統天皇)の病気平癒を祈願して建立を発願、持統天皇によって文武元年(697)に本尊が開眼し、更に文武天皇の御代に藤原京において完成しましたが、和銅3年(710)の平城京遷都に伴い現在地に移されました。
中門を入れば金堂を中心に、東塔・西塔が立ち並び、三つの建物の大屋根とその下に設けられた裳階(もこし)がつくりだすリズム感と美しさから「龍宮造り」と呼ばれています。私たちは、金堂でお坊さんの講話や、建物の前で植松先生の解説を聞きながら、建物が建てられた時代によって軒下の組物や高欄の形式などが異なることを自分の目で見て、歴史を感じることができました。なお、薬師寺は1999年にユネスコ世界遺産に登録されています。
次いで唐招提寺を訪れました。同寺の玄関である南大門は、切妻造りで柱間が五つの大きな門です。
南大門の正面には奈良時代に建立された寄棟造りの金堂、その背面にある講堂は、天平宝字4~7年(760~3)頃に、平城宮朝堂院の朝集殿の一つを移築・改造されたものです。元来、屋根は切妻造りでしたが、移築にあたって入母屋造りに改築されました。
その他、奈良時代に建立された校倉造りの宝蔵・経蔵、仁治元年(1240)建立の鼓楼などの建物が残されています。これらの建築群は、改修を重ねながら過去から連綿と続いて現代に伝えられたものです。建物に残された傷の一つ一つに歴史が刻み付けられたその容貌はとても美しく、数多の歴史を肌で感ずることができました。