法隆寺を訪ねて
植松ゼミ11回目の見学会は、7月18日(日)に世界最古の木造建築として有名な、奈良の法隆寺を訪れました。5・6月の見学会が雨天で中止となり、久しぶりの見学会となりました。
古建築の見学では、その建築ができた時代背景を知ることが大切ですが、時代による様式や部材名称などを知れば、その建築に対する理解がより深まり、美しさを感じることができます。
法隆寺は飛鳥時代の建築といわれますが、実は670年に罹災した若草伽藍の様式を継承して、8世紀初めに中門(写真1)・金堂(写真2)・五重塔(写真3)・回廊などで構成される西院伽藍が再建されたと考えられています。
細部を見ると、例えば、薬師寺などとは多いに異なっています。中門は、正面の柱の間が4つあります。これを柱間「四間」(よんけん)といい、多くの寺院の門では柱間が三間(さんげん)になっています。金堂は、創建以来多くの修理が施されていますが、昭和の修理でほぼ復原されました。なお、四隅に見える支柱は江戸時代のものです。金堂や五重塔に見られる、雲形の組物、卍くずしの組子が入った高欄、人字形の割束などが法隆寺様式の特徴となっています。
五重塔は、最下層から四層目までの柱間は三間ですが、最上層は二間になっています。構造技術が未発達な時代のせいでしょうか、古代の建築はこのような大胆な構造の処理をよくしています。最上層は近くから見上げると見えにくく、外観の見た目を重視したものと思われます。最下層から最上層へ向かって屋根が順々に小さくなっていくリズムがとても軽やかに感じます。その上には大きな相輪が立ち、全体のバランスを保っています。
法隆寺にはこの西院伽藍の他に、伝法堂(写真4)・夢殿(写真5)などがある東院伽藍があります。
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写真4 |
写真5 |
伝法堂は奈良時代の貴族の住宅を仏堂に改めたものです。屋根や軒の反りから、住宅にも大陸の影響が表れているのが窺えます。夢殿は八角円堂という型式で、同様の型式には栄山寺八角円堂(奈良時代)、興福寺北円堂(鎌倉時代)などがあります。
当日の暑さにも負けないで、古代の建築に思いを馳せた一時でした。