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平成27年度 学位記授与式 学長式辞

本日大阪人間科学大学ならびに大学院で所定の課程を修め学位記を授与された卒業生のみなさん、おめでとうございます。
この場に出席しているすべての教職員とともに、みなさんのご卒業、修了を心からお喜び申し上げます。

また、ご来賓の皆様には、ご多用のところご臨席賜りまして、厚く御礼申し上げます。

さらに、卒業生のみなさんの勉学を支えてこられたご家族をはじめ関係者のみなさまには心からお慶び申し上げます。

さて、大阪人間科学大学は2001年に開学されて本年で15年、学校法人薫英学園が設立されて85年の年に当たっています。
本学は2学科体制で設立され、4年前に学科再編を行い、5学科体制となりました。卒業生のみなさんは、5学科体制の第1期生ということになります。

卒業生のみなさんは、この4年間を振り返れば、楽しいこと、苦しいこと、さまざまなことが頭の中に浮かんでくるかと思います。大学で学んだ4年間、大学院で学んだ2年間は、これから社会に船出するみなさんの基礎となり、基盤となり、宝となることだと思います。

本学の教育理念は建学の精神「敬・信・愛」を継承し、自立と共生の心を培う人間教育を行うということです。

まずは「自立」ということ。社会、経済、国際情勢、どれをとってみても「各人がしっかりと考える」ということが求められています。

ところが、現代は情報社会と呼ばれて、私たちは情報の渦の中にいて情報の量に圧倒されています。インターネットやスマートフォン、確かに便利なものには違いありません。しかし、私たちはこの押し寄せる情報にただ身を任せるだけで、主体的に情報を選んでいるでしょうか。いつも自分以外の判断待ちで、自分自身は判断停止して考えるということをやめてはいないでしょうか。

また、世界的潮流として、「反・知性主義」の動きが出てきています。「反・知性主義」(Anti-Intelectualism)という考えは、アメリカ合衆国で「マッカーシズム」が吹き荒れたのちの1963年にRichard Hofstadter リチャード・ホーフスタッターが提唱した概念ですが、最近になって、日本でもさまざまな定義で使われるようになっています。たとえば「実証性や客観性を軽んじ、自分が理解したいように世界を理解する態度」(佐藤優)や政治の世界でポピュリズムに結びつけられて考えられてもいます。学問や知性を軽蔑し、嘲笑するような態度も「反・知性主義」と言ってもいいでしょう。

このような流れの中で、さまざまな情報を主体的・批判的に選択し、情報の波におぼれないようにすることが必要です。

どうか自分で考える時間を意識してもってください。そのためには新聞を読み、本―とりわけ近現代史の歴史書―を読むことが欠かせません。社会に出れば忙しくいたずらに時は過ぎてゆきます。どうか、今日の私の言葉を頭の片隅に留めて時間の使い方を意識するよう卒業生のみなさんに希望いたします。

本学の教育理念のもう一つ「共生」ということも昨今のさまざまな事象を見ていますと、ますます重要だと考えられます。たとえば「命」の問題です。テレビ、新聞等で報じられているさまざまな事件、テロや難民といった問題、「命」が軽んじられていることがあまりにも多すぎます。自己の「自立」とともに他者の「自立」を尊重する、これがなければ「共生」ということはありえません。

かつて宮沢賢治は「世界全体が幸福にならないうちは、個人の幸福はあり得ない」ということを言いましたが、この言葉は非常に重い言葉です。本学を卒業されるみなさんにも、一生考えていって貰いたい言葉だと思います。

大阪人間科学大学は卒業生のみなさんの母校となります。母校は英語でalma materといいますが、これはもともとラテン語で「養いの母親」という意味です。いよいよみなさんは母親の手から離れて飛び立つわけです。本学で獲得した基礎体力(mental とphysical)をもとに健康に留意して大きく羽ばたいていかれるようお祈りしております。

最後になりましたが、これからのみなさんの行く手に幸多かれと祈念いたしまして私からの式辞とさせていただきます。

平成28年3月18日
大阪人間科学大学学長
木村健治