国際・地域交流委員会として3名の教員(柏原・秦・大木)が、8月20日(月)~25日(土)にかけてカンボジアに福祉・保育を中心とした視察に出かけました。今回は、6回シリーズの第5回「カンボジアの女性のエンパワメント~障がい者福祉とフェアトレード」を報告したいと思います。
ここではほんの一端ですが、6回シリーズでご報告をお届けしたいと思います。
- カンボジアに渡った社会福祉学科の3台の車椅子
- 「くっくま孤児院」の子どもたちとの再会
- 日本語学校、幼稚園等の訪問
- 貧困の村の子どもたち
- 働く女性たち
- カンボジアの現状
幼児教育、福祉、対人援助の基礎を学ぶカンボジア海外研修の視察2日目・4日目。
私たち大阪人間科学大学の教員3人は、今回の視察のアテンドをしてくださった日本のNPO法人「グローブジャングル」によるカンボジアで働く女性のための支援プロジェクトを視察させていただきました。
このプロジェクトは、貧困地域に生きる女性の労働を支えるエンパワメントに向けた支援がフェアトレードをもとに展開されており、「持続可能な開発目標(SDGs)」をいくつも達成することにつながるものだと思います。
最初に訪れた、「カンボジア・ハンディクラフト・アソシエーション(CHA)」は、カンボジア伝統織物であるクメール織の手工芸品の製作や販売を行い、障がいのある女性の自立を支援する施設です。
カンボジアのローカルNGO で、内務省の公認を受けています。
もともとは地雷により身体に障がいを負った女性を支援するための施設だったそうですが、現在では地雷被害者の方は減少しており、内戦の影響によるポリオがある方や知的障がいがある方も、こちらで働いているとのことです。
グローブジャングルのスタッフより、「日本のグループホームと作業所が一緒になったようなところ」と説明を受け、イメージしやすくなりました。洗濯、掃除、料理等も、働く女性たちで担っているそうです。
シルクの素敵なスカーフがたくさん製作されていました。そのための質の高い技術を身に付ける場があり、質の高い商品を作ることができる―人間にとって、ディーセントワーク(働きがいのある仕事)の存在がいかに大切かを実感しました。

「CHA」の入り口。店頭の他、海外に向けても販売しているそうです。

実際に機織りをしていただきました。糸の配置をきちんと構成し、一枚一枚違うそうです。

こんな素敵なシルクのスカーフを買いました。一緒に写っているのは製作者さんです。
前回お伝えしたプレイクラン村におけるグローブジャングル小学校の校長先生の住居では、村の女性に対して就労を提供しています。
製品は、途上国の原料や商品と継続的に公正な価格で購入することで、生産者の生活の向上ができるよう支援する取引の方法である「フェアトレード(公正な取引)」がとられています。

写真では小さくてわかりにくいですが、青い布地にSDGsのロゴが縫い付けられていたのが印象的でした。
フェアトレードの意義と、働く女性たちの誇りが伝わってきます。

トンレサップ湖で採れる水草を乾燥させたものを、製品の原材料にするための作業を体験。
「ナチュラルバリュー」は、現地の母親の労働を支援するプロジェクト名で、2014年に現地の人で設立され、2016年より合併してグローブジャングルが共同で運営にあたっています。
12名の女性が働いており、年齢は17歳から35歳と幅広く、母親だけではなく家計の事情で若年女性も働いています(視察時データ)。
私たちが視察で訪れたときは、フェアトレードにより、カンボジアを支援している日本企業から設立記念日の景品を受注されているとのことで、とても忙しそうでした。
プロジェクトにより、「リーダーになりたい」「デザイナーになりたい」「先生になりたい」等、各々に目標ができているため効果があるとのことです。
また、本来の目的ではないものの、作業を覚えるのにメモをとる必要があるため、女性たちが読み書きできるようになり、今では母親が子どもに絵本の読み聞かせをしている風景が見られるまでになったそうです。
スタッフの方より、「各々自身が『できないこと』に気づく機会が大事」というお話を伺い、カンボジアの女性が自発的に、様々な社会的スキルを身に付けようとするための社会資源の必要性を強く認識しました。
今回ご紹介したグローブジャングルの支援プロジェクトは、いずれもグローブジャングルが0から始めたものではなく、既存の取り組みを支援し、共同運営しているとお聞きしました。
それは、日本のNPOに依存しすぎるとうまくいかず共同運営によって、カンボジアの人々自身の力で発展を推し進めることができるという理由だそうです。
カンボジアの働く女性たちに対して、フェアトレードの意義を最大限に発揮し、たくさんのディーセントワークをどんどん生み出すためには、自分たちに何ができるか―本学の学生にも、このような開発的な視点から考察する機会を得ることで現地のフィールドワークを通してぜひ学んでもらいたいと思います。(文責:大木)