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<令和2年度 第1回 図書館リレーインタヴュー 心理学部堤学部長へのインタヴュー>

こんにちは、図書館です。みなさん、新型コロナ禍の大変な中、いかがお過ごしでしょうか。

長らく閉館していた図書館も開館し、みなさんにご利用いただいております。
もうすぐ前期試験が始まりますが、しっかり準備はできておられますか。
スタッフ一同、みなさんの来館をお待ちしています。
論文、図書の検索方法など、お気軽に相談してください。レポートの書き方、試験対策の図書も充実しています。

さて、図書館情報を積極的に配信する取組として、今年度、7月より毎月、各学科から1名の教員へのインタヴュー記事を、
大学HP上で配信することとなりました。
配信の順番は、7月心理学科、8月理学療法学科、9月子ども保育学科、10月言語聴覚学科、11月作業療法学科、12月医療福祉学科、
1月社会福祉学科、2月図書館となります。楽しみにしていてください。

今回は、第1回目です。心理学部堤学部長研究室に参上させていただき、
これまでのキャリアの軌跡、おすすめの本、学生へのメッセージなどをお伺いしました。
堤先生、お忙しい中貴重なお時間をありがとうございました。

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書棚には、心理学関連のご本が並び、書棚の上にはボストン大学の学位記が。

Q;「堤先生は、これまでどのような本がお好きだったのですか?これまでお読みになられたご本やおすすめの図書はございますか?」

A;「私は、小学生のときから、シャーロックホームズや怪盗ルパンシリーズをよく読んでいました。
物語の心理描写やなぞ解きに興味を持つようになりました。面白く読みました。
また、内容だけではなく、本の装丁を眺めるのが好きでした。
構図の巧みさに注視していました。その一方で、少年野球にあけくれていました。」


 画像は出版元の使用許諾のもと掲載しています。

確かに面白い構図の装丁ですね。

Q;「堤先生は、東京学芸大をご卒業後、高校教員を経て、北アリゾナ大学大学院(修士)、ボストン大学大学院で学位(博士号)を取得後、
三菱電機に勤務された後、大学での研究・教育に従事されておられてるとお伺いしておりますが、
どのようなきっかけで心理学を目指されたのでしょうか。」

A;「父は書道家でした。幼い頃から書道をすすめられましたが私はじっと座ってやる書道は向いていませんでした。
しかし、アートには興味がありましたので将来の進路には、芸術大も視野に入れていました。
中学生のとき応募したポスター絵画では、受賞したことがありましたので、教師はじめ周りからその方面に向いているのではとの声もあり、自分自身そう思うようになりました。
実際、大学受験に際しては、教職と心理学かで迷いました。
卒業後、教員として教育にあたりましたが、どうも「叱る」「命令する」という自分自身の姿を振り返り、
やっぱり「やる気」こそが大事だと思い、米国の大学院で心理学を勉強することにしました。
さまざまな経験をして来ましたが、一貫して、私は「健康教育」に興味・関心を抱いていました。
そのことが、現在につながっていると思います。
米国で、認知行動療法を学ぶ上で、この領域は学問・科学の側面とアートの側面両方の視点が必要であると痛感したので、よかったと思います。」

Q;「海外へ志向したのは何かきっかけがあったからですか。」

A;「海外への憧憬は、兄が持ち帰ったポパイという情報雑誌(*海外情報満載の人気の雑誌)と
沢木耕太郎著の「深夜特急 香港、マカオ」などの影響から来ていると思います。
また、中学校で出会った担任教員の影響もあると思います。その先生はとても気が合いました。
中学校から途中で、ギリシャの日本人学校に赴かれました。今、思えば、海外へ目を向けるよい刺激に満ちていたと思います。」

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 この画像は出版元の使用許諾のもと掲載しています。

Q;「大学でも野球をされていたのですか?」

A;「大学生時代はスキーをしていました。
アメリカでは、指導員の資格を活かし楽しみながらスキーインストラクターをしたり、
留学先の大学で講師をしたり、アメリカレッドクロス(赤十字社)でボランティア活動を行っていました。」

Q;「これまでのお仕事で印象的な出来事を教えてください。」

A;「ボストン大学にいた頃、1995年の阪神淡路大震災が起こりました。
アメリカのレッドクロス(赤十字社)でボランティア活動を行っていた関係で、当時の研究仲間から子どものPTSDに関する資料が欲しいとの依頼がありました。避難所における子どもの心をどうケアするかについての視点が当時の日本ではほとんど散見されませんでした。
その頃、メンタル・ケアは成人を中心に行われ、子どもたちに注目し、その心の問題に対処している例はごくわずかだったのです。
米国の最大ボランティア団体であるレッドクロスで特徴的なのは、DMHS(Disaster mental health service)と呼ばれるメンタルヘルスを専門に扱うサービス・チームがありました。
DMHSチームは、精神的に弱い子どもたちを、まっさきにメンタルヘルスケアが必要な者たちと考え、
災害発生後、すみやかに彼らの精神状態の診断にあたる。
そして、処置が必要な子どもには、ストレス・マネジメントなどを適切に行うことによって二次的精神被害や
トラウマ(心的外傷)を防ごうとしていました。それらの情報提供に努めました。」

Q;「この震災後、研究仲間の一員として、学校の教師用に「子どものメンタル・ケア」に関する資料の作成に取り組まれたということですね。」

A;「はい。下記の本がみなさんとの協同の成果です。」

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 この画像は出版元の使用許諾のもと掲載しています。

「子どものためのストレスマネジメント」
堤先生は、第5章 米国の学校事情とボランティア事情について執筆されています。
この本は図書館で閲覧・貸出もしています。

https://kunlibrary.opac.jp/opac/Free_word_search/hlist?q=%E5%A0%A4%E4%BF%8A%E5%BD%A6&tmtl=1&rgtn=072257&idx=7

Q;「堤先生は、学生にどのような人になってほしいと思いますか。学生に伝えたいことは何ですか。」

A;「アドラーの教えに心を表す三角柱がでてきます。三角柱の1面は「かわいそうなわたし」もう1面は「悪いあの人」です。
心の問題で悩む多くの人はこの2面に始終します。三角柱に隠れているもう一面は「これからどうするか」です。
「悪いあの人」などいらない。「かわいそうなわたし」も必要ない。
「これからどうするか」観点で前に進むための行動をとってほしいですね。」

<インタヴューを終えて>
堤先生に、いろいろお伺いする中で一番印象的だったのは、ボストン大学におられたときに、遠方ながら、
1995年の阪神・淡路大震災で傷ついた子どもたちのために、心理学者として奔走されたとのことです。感銘を受けました。
特に、アメリカのレッドクロスはボランティアの研修が厳格に行われ、専門性を身に付けるべく教育がなされている点でした。
ご紹介いただいた本の中でも言及されておられますが、『「米国社会」ではボランティアと言えども専門的な知識を得た者が精力的に活動し、社会のために奉仕している。日本もこのような援助のエキスパートとして訓練をうけたボランティア組織が生まれることを願っている。
もしこのような組織が存在していれば、阪神大震災のような大きな災害後に、子どもたちが受けた心理的ダメージを軽減できたと思われる。災害は突然やってくる。』というのはその通りだと思いました。
「長年海外生活をされて大変だったとは思いますが、自由に方向性を決め計画的に進んで来られたのですね。」との問いに、
葛藤を抱えながら来たというお話も印象的でした。
どのような局面でも自然体で、心の中心にある羅針盤のようなものに従って、いろいろな本や人との出会いにも影響を受けつつ、
それらを糧とし、研究・教育者として来られた軌跡をお伺いすることができました。
ありがとうございました。

堤先生の執筆本が図書館ありましたので、ご紹介します。

〇「健康・医療心理学」
https://kunlibrary.opac.jp/opac/Free_word_search/hlist?q=%E5%A0%A4%E4%BF%8A%E5%BD%A6&tmtl=1&rgtn=115229&idx=0

〇「子どものためのストレスマネジメント教育」
https://kunlibrary.opac.jp/opac/Free_word_search/hlist?q=%E5%A0%A4%E4%BF%8A%E5%BD%A6&tmtl=1&rgtn=072257&idx=8

〇「包括的ストレスマネジメント」
https://kunlibrary.opac.jp/opac/Book_list/hlist?lno=20&idx=62&tmtl=1&rgtn=095307

〇「自ら実感する心理学」
https://kunlibrary.opac.jp/opac/Free_word_search/hlist?q=%E5%A0%A4%E4%BF%8A%E5%BD%A6&tmtl=1&rgtn=112565&idx=2

〇「最新スポーツ心理学 その軌跡と展望」
https://kunlibrary.opac.jp/opac/Free_word_search/hlist?q=%E5%A0%A4%E4%BF%8A%E5%BD%A6&tmtl=1&rgtn=086303&idx=5

〇「ストレスマネジメント・テキスト ストレスを知り、じょうずにつきあうために!」
https://kunlibrary.opac.jp/opac/Free_word_search/hlist?q=%E5%A0%A4%E4%BF%8A%E5%BD%A6&tmtl=1&rgtn=082618&idx=6

また、認知行動療法 をキーワードに検索すると84件の図書がヒットしました。
その中で気になる本を5冊選書しました。
是非、みなさん、図書館に足をお運びください。
お待ちしています。

「認知行動療法のすべてがわかる本」
「マンガでわかりやすいうつ病の認知行動療法」
「認知療法・認知行動療法 面接の実際」
「認知行動療法の理論と実際」
「認知行動療法入門」