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<令和3年度 第3回 図書館リレーインタヴュー 子ども教育学科 准教授 横島三和子先生へのインタヴュー>

こんにちは。図書館です!
図書館では、図書館情報を積極的に配信する取り組みとして、
教員のおすすめ本の紹介を大学HPで配信することになりました!
今回は、今年度の3回目の配信となります。
第3回目は、子ども教育学科 准教授 横島三和子先生のおすすめ本を紹介します。
横島三和子先生、図書館リレーインタヴューへのご協力ありがとうございました。

<本の紹介>

学生の皆さん、こんにちは。こうして皆さんと本でつながることができ、嬉しく思います。
今回、Instagram風に構成してみました。いいねやコメントボタンはありませんが、
興味を持ってくれた方がいらしたら、本との出会いを求めてぜひ大学の図書館に足を運んでみてください。

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1-観察する眼

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内田ユキオ『ライカとモノクロの日々』枻文庫刊
荒木経惟『さっちん』新潮社刊
梅佳代『男子』リトルモア刊

大学院生の頃、部活と称して、カメラにモノクロフイルムを詰めてよく出かけていました。
50mmレンズをつけて被写体とまっすぐに向き合い、その場をいかに切り取り意味付けるかということを
繰り返しているうちに、写真は自分の思考や表現を可視化するものかもしれないということに気が付きました。
研究と写真は、当時、私の生活の中心でした。

写真のある日常は、刺激に溢れていました。目で見るのとファインダー越しに見るのでは、
なぜか随分違いました。カメラを通すと、私だけが見つけた世界にいるようでした。
内田ユキオさんの『ライカとモノクロの日々』は、写真を始めた頃に読んだ本です。
ライカにも憧れました。内田さんの撮るモノクロ写真は、まるで音や色がついているように、ドラマチックでした。

『さっちん』は、荒木経惟さんが千葉大学に在学中(1962年頃)に撮影された写真集です。
昭和30年代に荒木さんが出会った小学4年生のさっちんの、無邪気で屈託のない表情が
モノクロ写真で描かれています。平成の子どもをカラーで捉えたのが、梅佳代さんの『男子』です。
子どものパワフルさと同じくらいの熱量で被写体を追いかけた梅さんの写真家魂と観察眼に圧倒されます。

写真は、被写体の有様を受け止め、関心を持ち、尊敬し、見えるものだけでなく見えないものも洞察する、
そしてそこにある価値を捉えて、細部まで気を配り仕上げること。
このような感覚は、教育者や保育者になる人にも大切なことだなと思います。

『まんまんちゃんでとてた』は、私が作成した初めての写真集です。

#ライカ #モノクロ #フイルム #単焦点レンズ #小学4年生 #昭和 #男子 #平成 #カラー #デジタル


2-書道の世界へようこそ

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王義之『蘭亭叙 五種 東普』二玄社刊
『墨』2021年11月・12月号 芸術新聞社刊
谷知子『百人一首解剖図鑑』エクスナレッジ刊
夏目房之介『書って何だろう?』二玄社刊
「墨」編集部編/川口澄子絵『教えて先生!書のきほん』芸術新聞社刊

大学時代は、書道を専攻していました。研究室の書棚には、書に関する本がたくさん配架されていて、
よく活用していました。二玄社の『中国法書選』シリーズは、基本練習や作品作りには欠かせないものでした。
王羲之の『蘭亭叙』や欧陽詢の『九成宮醴泉銘』、『王鐸集』や『傅山集』は何度も真似て書いていました。
それぞれに書風は異なりますが、どれも魅了されるものがあり、作家の息遣いが聞こえてくるようでした。

「余白」をどう見せるかということは書の表現にとって大事なことです。
書道研究室に入ってすぐの頃は、字を書いていればおのずと余白はできるものだというくらいにしか
思っていませんでした。しかし、古典の模倣をしたり先生方の書く姿や語りに触れたりしているうちに、
余白をどう見せるのかも書の表現だということを知り、驚いたことを今でもよく覚えています。
2021年11・12月号の『墨』という雑誌に、
その特集が組まれています。書家の深山龍洞さんは、余白について次のように述べています。

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行間の白に生命を与える。書いていないところを書く。
余った白ではなく要白である。書の中で最も大切な問題。
文字の書き方によって色がついてくる。
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書とつながりの深いものに、和歌があります。かな文字は和歌とともに発展してきました。
百人一首は、飛鳥時代から鎌倉時代に詠まれた名歌を藤原定家が選定した和歌集といわれています。
谷知子さんの『百人一首解剖図鑑』は、どのような背景や思いの中で和歌が生まれたのか、
年表やイラストなどを使いながら時代や歌人の人物像、歌の内容を解説しています。
歌人の心情を想像しながら、短冊や料紙に和歌をしたためるのも乙なものです。

書のことを基本から知りたいと思った方は、『教えて先生!書のきほん』はいかがでしょうか。
こすみちゃんというキャラクターがナビゲーターとして、筆仙人たちから書のきほんや魅力を
イラストや写真で解説してくれます。書をどう鑑賞したらいいの?難しそうという方には、
夏目房之介さんの『書ってなんだろう?』はおすすめです。
つぶやきや漫画で書を感覚的につかもうとしているところが面白いです。

#中国法書選 #大学図書館にもあります #書家の息遣い #墨 #余白の美 #黒と白 #和歌 #かな #百人一首 #時を超えて #こすみちゃん
#書ってなんだろう


3-「わかる」「学び」にせまる、創造性を育む

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佐藤公治『対話の中の学びと成長』金子書房刊
佐伯胖『「わかる」ということの意味』新版 岩波書店刊
佐伯胖『「学び」の構造』東洋館出版社刊
A・オスボーン/豊田晃訳『想像力を生かせ』創元社刊
佐伯胖/藤田英典/佐藤学編『表現者として育つ』東京大学出版会刊
佐藤学/今井康雄編『子どもたちの想像力を育む アート教育の思想と実践』東京大学出版会刊


私は、子どもたちの「わかる」や「なぜ」が起こるしくみを研究対象としています。
これらの問いを追究するために、人が学ぶとはどういうことかについて学んでいます。

佐伯胖さんは『「わかる」ということの意味』の中で、子どもは常にわかろうとしている、
「わかっていない」から「わかっている」へ向けて動いている状態なのだ、と述べています。
当たり前のことのように思うかもしれませんが、子どもを捉えようとするとき、
わかっているかわかっていないかのみに目を向けてしまいがちです。
わかろうとしている姿を見ようとし、ともにわかろうとする人間として寄り添う、
そう在りたいと思います。

佐伯さんは『「学び」の構造』の著書でも「わかる」ということについて言及されています。
ものごとをわかっていくときには、意味の世界を関連付け、広げていくものであり、
絶えざる問いかけを行うことでもあり、無関係であったもの同士が関連付いてくることであると。
現行の学習指導要領に、各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方(これを「見方・考え方」という)を
働かせて思考し、より良い社会や人生を創り出すとありますが、
まさにこの見方・考え方が「わかる」に迫るキーワードになると言えると思います。

佐藤公治さんは、『対話の中の学びと成長』の中で、学びにおける対話の重要性を指摘しています。
学びにおいて、他者の存在と役割が人の育ちに大きな影響を及ぼします。
他者と対話し、教えたり学んだりの関係が変化しながら相互に作用し合うことによって、
思考し、判断し、表現することを身につけていくのではないでしょうか。

「わかる」や「学び」に迫ってきましたが、そこにワクワクがなければ新しいものは生まれませんし、
そもそも楽しくありません。
学生のみなさんには、どんなことでもいいので探究し、対話を通して
クリエイティビティ(創造)を発揮して、アート(表現)の力とICTで形にするというプロセスを
大学生の間にたくさん味わってほしいと思っています。

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                                      (子ども教育学科 横島三和子)