新着
アーカイブ

本の話あるいは読書のすすめ

2015年10月14日

本のことで少し前に話題になっていたのは漫才師の又吉直樹が『火花』で芥川賞を受賞したことであった。私も早速Kindle版で買い求め読んでみた。この小説のことについてはまた別のところで書きたいと思っているけれど、ともかくも、こういうことが話題になって本を読んでみようかと思った人が少しでも出てきたとすれば嬉しいことだと思う。

私の専門は西洋古典学と演劇学、より細かく言えば、ギリシア・ローマ演劇であり、その専門にかかわること、かかわらないことで、日頃様々な本を読んでいるが、最近読んだ本でここで紹介したいと思うのは齋藤孝の『読書力』(岩波書店、2002年)と津野海太郎の『百歳までの読書術』(本の雑誌社、2015年)の二冊である。

 

齋藤孝はかつて『声に出して読みたい日本語』で話題をさらった人だが、彼の『読書力』を最近読んでみてずいぶんと同感するところが多かった。学生のみなさんがどういう形で本を読む習慣を身に付ければよいのだろうかとか、どういう本を読んでみたらいいのだろうかと迷っている場合、一度自分の読書を振り返ってみるのに参考になる本である。

「序 読書力とは何か」、「Ⅰ 自分をつくる:自己形成としての読書」、「Ⅱ 自分を鍛える:読書はスポーツだ」、「Ⅲ 自分を広げる:読書はコミュニケーション力の基礎だ」、と続き、最後には著者がすすめる「文庫百選」がついている。

 

 

一方、津野海太郎の『百歳までの読書術』は、人生の残り時間も少なくなった私のような人間の読書の心構えをおもしろく書いてくれている本である。これはまあ若い人におすすめの本ということではない。私の世代の人間、とりわけ、演劇に興味をもっていた者にとっては、津野海太郎は劇団「黒テント」の演出家としてのみ記憶に残っているのだが、彼がどのような読書の癖を持ち、どのような読書遍歴を重ねてきたのか、非常に興味深く、一気に読み終えた次第。

いずれにしろ、人生を豊かにし、人間の幅を広げてくれる本というものについて、もう一度考えてもらいたいと思っています。読書週間も今月27日から始まります。