社会福祉法人慶徳会
茨木市地域包括支援センター常清の里
地域包括支援センター 社会福祉士
2013年3月 社会福祉学科 卒業
(現 人間科学部 社会福祉学科)
誰でもその方らしく幸福な生活を送る権利がある。
しかし、
様々な理由によって、
それができなくなっている方たちがいる。
地域に深くかかわりその相談にのり、
一人ひとりが抱える問題を整理し、
解決に向けて、支援する。
「人と接することが好きだから」。
地域包括支援センターで働く山本さんは
社会福祉士の道を選んだ理由をシンプルに語る。
そのやわらかな笑顔と明るい口調には、
支援が必要な方たちに寄り添う想いが込められている。
地域包括支援センターで、高齢者の生活に関する支援をしています。住み慣れた地域の中で高齢者が安心して生活できるように、ご家庭訪問などで状況を聞き取り、必要な福祉、介護、健康支援、医療制度につなげていきます。ときに高齢者支援は本人だけでなく、家族など介護者にも支援が必要な場合もあります。しっかり原因に向き合っていくと、介護者さん側も何らかの問題を抱えて課題が複合しているケースがあるため、行政やほかの機関との連携が欠かせません。
ある高齢者虐待の方のケースでは、介護者自身に生活困窮や不就労、DV、住居の損傷などいくつもの問題が重なっていました。支援にはコミュニティソーシャルワーカーや地域の生活相談窓口、市のDV担当など、10以上の機関・専門職がかかわることになり、情報収集や役割分担のためにケース会議を開催。専門職同士で支援内容が重なる場合には、それぞれの得意分野を把握して役割を分担していきました。関係機関が多いほど、その進行や役割分担が複雑化しますが、すべてはその方にとって本当に必要な支援につなげ、解決を目指すためです。高齢者の方には施設への入所と、資産を守る成年後見制度の手続きを完了してもらい、介護者さん側には就労サポートや公営住宅の紹介など、双方の問題を一部適切に切り離して支援につなぎました。
社会福祉士の役割は、ケースの課題やその原因を探り、必要となる支援をコーディネートすることです。なぜそのような課題が生まれたのか?なぜその人はそう考えるのか?利用者さん一人ひとりの異なる人生を見つめ、寄り添いながら支援を続けています。
普段から地域と連携が取れるように、管轄するエリア内の各団体が加盟する「見守りセーフティーネット会議」に参加し、地域の情報を得るのも大切な活動です。その活動の一環で、地域の声を活かした「社会資源マップ」を作成。必要な社会資源(介護サービス事業所、いきいきサロンなどの居場所、病院までのバスの経路など)の情報をまとめることで、他地域から転居してきた高齢者にも社会参加を促せられることを目的としています。
地域の高齢者の支援をしていく中で、とても難しい支援ケースに出合うこともあります。ある一人暮らし高齢者の方は、以前から見守り支援の対象でしたが、「自分のことは自分でできる」と病院や介護ヘルパーの利用も一切受けてもらえません。さらに、加齢で徐々に本人の体力が弱まり、思うように動けなくなった状態でも支援は拒否されました。それでも医師の診察や必要な生活支援のため、行政や民生委員、ケアマネジャー、地域の自治会とも連携した結果、近隣の個人医院に往診を引き受けてもらえることに。診察の後、ご本人の手を医師がゆっくり握ると、不安な思いが溢れてきたのか涙を流されました。難しいケースでしたが自治会の方々の多大な協力も得られ、最期まで自宅で過ごすというご本人の希望を尊重できたのかなと思っています。
大学時代のゼミのテーマは地域福祉。学生時代から在宅支援の仕事に就こうと考えていましたが、その前に施設での介護を経験したく、卒業後は特別養護老人ホームで働きました。当時は施設内の介護職や看護師との連携が主でしたが、地域包括支援センターではケースごとに様々な専門職と連携するため、誰にでも同じように「自分自身の当たり前」が通じるとは限りません。私の思う「普通」は、相手にとっての「普通」とは基準が違うかもしれない。利用者さんに気を配るのと同じように、専門職同士でもまずは相手をよく理解することを心がけています。
そして、事実確認や情報収集のフットワークは軽く、なるべく早くチームや行政の担当部署と情報共有して、支援内容を検討。自分一人で考えるより、それぞれの専門力を借りることで、より良い支援ができると思っています。
人は、大事なことほど、なかなか言い出せないものです。利用者さんにとって、安心して自然と話しやすい存在になりたい。そのためにも支援内容や発言に自信を持てるよう、まだまだ経験を積んでいきたいと思います。
/ 支援チームの方々が語る山本さん
山本さんは、自分の考えに芯が通っていると感じます。常に勉強もされていて、ものごとを整理して伝えるのがうまい。研修会など外部の方々に話す場でも、その役を率先してやってくれてとても頼もしいです。
高校時代からボランティア活動をしていたという山本さん。大阪人間科学大学でも、ボランティアのサークルを立ち上げて代表を務め、障がい者福祉施設の学習ボランティアや、養護施設の行事の手伝いなどの活動をしていたそうだ。「活動については友人とよく相談しました。お互いに異なる意見も遠慮なく言い合う関係で、新たな視点を得ることも多かった」と語る山本さん。積極的に人の考え方や価値観を取り入れ、より良い支援につなげようとする姿勢は今に生きている。
若いけど頼りがいのある、お母さんのような存在(笑)。
多方面への小まめな連絡や、対応がとても丁寧で親身。優しさの中にも、利用者さんの自立のために、できることとできないことをキチンと伝えられる。その線引きも見事です。