支援が必要な子どもが笑顔になれるように。リハビリテーション専門職にできること。

未来の医療・福祉は私が創る LEADERS Vol.02

発達に障がいがある子どもたちを支援する

子どもの医療や発達科学は目覚ましく進歩しています。小児の脳神経科学では、脳の構造や発達には個別性があり、多様性があることが分かっています。つまり人には、それぞれ「その人らしい」育ち方や学び方があるということです。
そして、その個性や能力を尊重し、その子に応じた育て方や学び方をチームで支える、「チーム子育て支援」、「チーム学校支援」が始まっています。障がいは早期に発見し、早期に援助すれば、改善し軽減できることも研究で明らかになっています。
こういった科学的事実をもとに、地域で子どもが成長していくプロセスを支え、支援の具体的方法、環境への配慮などを提案できるリハビリテーション専門職が求められています。
本学では、子どもを支援するための様々な知識や技術を学ぶことができます。障がいがあっても、「地域で共に生きる」、「共に学ぶ」ことができる社会を創っていく、対人援助のプロを目指しませんか。

私が、子どもにしてあげたい事ってなんだろう

子どもの“可能性”を広げる仕事
作業療法士

食事、着替え、遊び、学習など、
日常生活そのものが、
子どもにとって大切な
作業だから。

保健医療学部 作業療法学科
辻 薫 教授 (就任予定)

子どもの「日常生活」に寄り添い、可能性を広げていく。

子どもの発達に障がいがある場合、お母さん、お父さんの子育てがうまくいくように作業療法士は家庭生活を援助します。脳性まひ、ダウン症、自閉スペクトラム症、筋ジストロフィーなど様々な理由で、食事や着替え、遊びや学習が困難な子どもたちにとって、日々繰り返されるそれらの生活行為は大切な練習場面です。食事であれば、「食べたい」という意欲を尊重し、その子が持ちやすいようなスプーンやお箸の改良や、手の使い方の練習、道具がうまく使えるよう姿勢を支える椅子を選ぶなどします。
そして、専門的知識に基づき、子どもの困っている理由を分かりやすく両親に伝え、良き理解者になってもらいます。保育所や幼稚園、学校へと社会参加していく過程で、周囲の子どもや支援する人たちにも援助方法を伝えたり、参加しやすい環境づくりを提案します。
子どもにとっては日常生活の遊びも学習も、初めて経験することばかり。障がいがある子どもにとっては、心身ともに緊張し、失敗も多くなりがちです。スモールステップに分けることで、成功を積み重ねて自信をつけることが大事なのです。例えば、靴下を脱ぐ動作なら、最初はつま先まで靴下をずらしておき、子どもが「靴下の先を握って引っ張る動作」をすれば、成功するようにします。
確実に成功できるようになれば、次は少し手前から引っ張る練習へ。生活行為を分析し、成功しやすい学習ステップを考え、練習方法を段階づけて目標達成に近づけます。また、その方法を両親や支援者と共有し、チームで協力し達成していきます。

どの子にも、生きるエネルギーと学ぶ意欲がある。

子どもは、脳、身体、心の成長発達過程にあり、一人ひとり成長発達のペースや学び方に違いがあります。個性や障がいの特性に合わせ、子どもが「自分でやりたい」という意欲と「できた、分かった」という自信につながるよう、作業療法には様々な遊びや工夫を取り入れます。子どもはみんな素直で正直。面白そうなことには興味を持ってチャレンジしてくれます。
子どもの支援を目指すなら、まず、子どもがしている遊びや関心事に目を向け、そばにいて見守り、素直に子どもと一緒に楽しんでみてください。謙虚に「子どもから学ぶ」、「家族から学ぶ」ことを忘れずに。どんなに小さな子どもにも相手を尊重する態度で、子どものペースに合わせながら、一緒にチャレンジしていきましょう。

2020年4月
作業療法学科新設

現場経験が豊富な教員のもと、
障がいに応じた支援スキルを習得。

医療機関や福祉施設、在宅ケアや就労支援、認知症ケアの専門職まで、活躍が期待される作業療法士。本学科は、その高い専門性と幅広い知識と技能、医療職としての志を育みます。指導にあたる教員は作業療法の現場や、研究の各分野で活躍してきた経験豊富な専門家たち。 子どものリハビリテーションについても専門的に学べます。2020年4月スタートの保健医療学部では、従来の理学療法士、言語聴覚士に加え、作業療法士を養成。 他学科との連携により「チーム支援」を実践的に学べる環境と、国家試験に対応した授業や合計1000時間を超える臨床実習の数々で、作業療法士を目指すあなたをバックアップします。

子どもの“持っている力”を最大限に引き出す仕事
理学療法士

困難を乗り越えて成長する子どもたちを、
家族とともに温かく支える力になる。

保健医療学部 理学療法学科
山川 友康 教授

障がいのある子どもの成長を、チーム医療で支えていく。

リハビリテーションが必要な子どもたちに多いのは脳性まひによる障がいで、四肢まひや片まひ、両まひなどが含まれます。他に重症心身障がい、ダウン症などの知的発達障がい、神経・筋疾患や小児整形外科疾患などを患っている子どもたちも支援の対象となります。
脳性まひは乳幼児からリハビリテーションを開始するため、支援が子どもの成長にもかかわってきます。お座りや寝返り、立位・歩行など運動発達に関することや、食事や入浴、着替えなど日常生活の動作、つかむ・離すなど手の操作能力、言葉の発達、社会性、対人関係、認知能力など、その内容は幅広いものに。そのため、一人ひとりの子どもに対するケース会議が開かれ、療育目標を共有します。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、保育士などがチームとなり、連携して支援していきます。
理学療法士の専門は運動発達にあたりますが、子どもの場合はリハビリテーションに遊びを取り入れることが多く、作業療法士や言語聴覚士の分野にもかかわります。そのためチームで情報交換をしながら、遊びの内容や話しかけ方なども配慮します。大人の場合は病気やケガで失った歩行などの能力を、再び獲得するためにリハビリテーションをしますが、子どもの場合は、これから成長とともに獲得する能力を支援する役割があるのです。

親や家族とともに、その成長を見守る。

施設でのリハビリテーションだけではなく、家族も子どもの発達を促すためにするべきことがあります。普段の抱っこの仕方でも、発達を促す抱き方があり、それらの指導も私たちの役割です。学校へ上がる年齢になると、通学の移動手段をどうするべきかという問題もでてきます。子どもの状態に適した歩行器具や車椅子などを提案するなど、子どもや家族の困りごとには相談に乗り、協力します。子どもの生命、生活、人生の質を向上させることに携わり、家族とともにその成長を見守り、一緒に喜べる、やりがいのある仕事です。
理学療法士を目指すなら、障がいのある人やその家族の思いを受け止め、共感することも大切。真摯で誠意ある態度で接し、信頼関係が築けること。そして、支える側となる自分自身が、心身ともに健康であり続けるために努力ができることも大事な条件だと思います。

理学療法士の仕事道具<学び編>

大学では、乳幼児の発達や乳幼児との接し方を、モデル人形を使って学びます。例えば、協応性(手足を動かす力)の発達を促すためには、普段から両手、両足がふれあうように抱くことが乳幼児の発達を促すことにつながります。

子どもの“コミュニケーション”の橋渡しをする仕事
言語聴覚士

うまく話せなかった子どもが
自信を持って話せるようになった姿に、
心が熱くなる。

保健医療学部 言語聴覚学科
宮地 ゆうじ 助教

問題の原因を見極めて、一人ひとりに合ったトレーニングを。

“話す”ことに問題を抱えて、リハビリテーションにやってくる子どもたち。「サカナ」の“サ”がうまく言えず「タカナ」と誤って発音してしまう子(構音障がい)、同年齢の子どもに比べると、話し言葉の発達がゆっくりしている子(言語発達遅滞)、生まれつき耳が聴こえなくて言葉によるコミュニケーションが難しい子(難聴)など、様々です。
例えば、幼児によくある「タカナ」などの誤った発音ですが、これも何らかの理由で誤った発音習慣が身に付いてしまった結果です。したがって、リハビリテーションを始める前に、まずは問題が口腔の構造にあるのか、聴こえにあるのか、様々な検査を行い分析します。なぜ誤りが生じているのか、どのように誤っているのか。問題点を明らかにし、リハビリテーションのプランを立て、ご家族の方と一緒にトレーニングを行っていきます。

子どものやる気を引き出すことが大切。

トレーニングには、子ども自身が発音の誤りに気づき、「きれいな発音を覚えたい」と意欲を高めてあげることが重要だと思います。また、子どもたちのちょっとした努力や工夫で達成可能な小さな目標を立てるとともに、その目標をいくつも達成していけるように、トレーニングを行います。トレーニングを続けたくなるような遊びの要素も大切で、トレーニング用のおもちゃを手作りすることもよくあります。
構音障がいの原因が、舌の動かし方のクセで習慣化している場合、改善するまでどうしても時間がかかります。それでもトレーニングを続け、少しずつ問題が軽減され、子どもが自分の言葉に対する自信を回復していく過程を支えることは、大きな充実感があります。リハビリテーションの期間が終わり、まるで問題などなかったかのように元気に話す子どもの姿を目にすると、やはり感動しますね。
言葉や聴こえに関する障がいは、目に見えないため容易に想像できるものではありません。相手がうまく話せないと、話しかけてはいけない気がして距離をとってしまったこと、ありませんか?対人援助の道を目指すなら、まずは障がいを理解することから始めましょう。理解することで、できることがきっと見えてきます。

言語聴覚士の仕事道具

子どもが遊びながらトレーニングができるように、おもちゃを手作りします。発音練習が楽しくできるよう、人気のキャラクターを描いてみたり、息を吹き込むとモコモコ膨らむおもちゃなど、子どもが興味を持って取り組むことができる教材を作っています。

大阪人間科学大学なら、こう学ぶ

対人援助演習II

「チーム支援」のリーダーを養成する。

チーム支援には、自分の専門分野以外の職種に対する理解と、コミュニケーション力が必要です。対人援助演習Ⅱでは、本学が養成する様々な対人援助のプロフェッショナルがどのような仕事をするのか、学部学科専攻の枠を超えて相互に理解を深めます。授業は、グループディスカッションを中心とした演習方式で、他学部学科専攻の学生たちと意見を出し合います。例えば、心理学の講義では、自分の気持ちを絵に描いて気づいたことを話し合います。チーム支援が実体験できるのは、対人援助の学びが7分野も揃う本学ならでは。将来、異なる分野のプロフェッショナルが集まり、最適な支援の在り方を検討するチーム支援の現場において、身に付けた力が役立ちます。