2015年2月21日
読書には大きく3つぐらいの目的があるでしょうか。
■知識を得るため。教科書、専門書などはここに入るでしょう。
■教養を身に付けるため。人間として精神を鍛え、心を豊かにする書物。
■娯楽のため。
図書館から学長の推薦図書というコーナーができたので、推薦図書を挙げる原稿の依頼がありました。実はこの試みの発案者は私です。4年間のうちで専門的知識を得ることはもちろんですが、人間性を磨くために「教養」書を読んでもらいたいとの思いからこの企画を働きかけた次第です。
ところでこの推薦図書ということを考えていたときに、たまたま、ピーター・ゲイの『フロイトを読む』(法政大学出版局、1995年)を読んでいたら、フロイトも「十冊の優れた書物」を挙げるアンケートに答えたことがあるという記述に出くわしました。精神分析学のフロイトのことです、変わった回答を出しています。これは私の推測ですが、まともに答えたら自分の心の内をさらけ出すのではないかとの配慮からまともな回答を寄せなかったのだと思われます。
フロイトはともかく、私は、変化球ではなくて直球で教育的配慮から回答を寄せています。哲学、歴史、文学からそれぞれプラトンの『ソクラテスの弁明』、E.H.カーの『歴史とは何か』、夏目漱石の『こころ』を挙げておきました。
学生のみなさんには専門書で専門の知識を積むとともに、専門外の様々な本を読んで人間としての幅を広げていってもらいたいと思います。図書館はそのための宝庫です。あるいは<知>のワンダーランドと言ってもいいでしょう。図書館を大いに利用し、本に親しみ、「教養」を深めていってください。
2015年1月 8日
今年は元日から雪のお正月となりました。普段の町並みとは異なり、雪化粧をした家並み、道路はハレの日にふさわしい様相を呈していました。
1月1日は気持ちをリセットし、この一年新たな気持ちでがんばろうという決意を固める日です。調べてみましたら、私が専門とする古代ローマでも、1月1日が特別の意味をもっていたことを詩人オウィディウスが『祭暦』の中で述べていることが分かりました。古代のローマでも現代の日本でも共通することがあるということは、西洋古典学を専門とする私にとっては嬉しい発見でした。
大阪人間科学大学にとって、2015年は、3年前の新設学科・専攻がいよいよ完成年度を迎える年です。しっかりとした成果が出せるよう、教職員、学生、大学全体で取り組んでいきたいと思います。
また、2015年は2016年に新しい学科をたちあげる申請の年でもあります。この申請に向けて着実な準備を進めていきたいと考えています。
今年1年がみなさまにとって幸多き年でありますようお祈りしております。
学長ブログのほうもご愛読のほどよろしくお願いいたします。
2014年8月 8日
前期末試験が終わるといよいよ夏休みが始まります。私の学生時代の夏休みということになると、文学部にいたこともあってか、読みたいと思っていた本がいよいよ読める時間ができるとわくわくした思い出があります。授業がある間は予習や復習で忙しく授業と関係のない本は夏休みや冬休みを利用してということになっていました。
最近ある新聞が漱石の『こころ』を連載しています。高校時代にこれを読んだのですがやはり夏休みだったと思います。友情とか人が生きることについてこの小説は自分で考えるきっかけを作ってくれました。おもしろいことに今新聞で連載しているのをまた読んでいるのですが、50年以上前に読んだこの本がよく覚えているところとそれほど覚えていないところがあって、読むたびに新鮮で興趣が尽きません。
古典というものはこういうものでしょう。私は若いときに読んだものが今こうしてまた驚きを与えてくれていることに感激を覚えています。時間の経過があっても何度も新しい意味を与えてくれるものが「古典」というものでしょうが、学生のみなさんにはぜひ夏休みを利用して「古典」との出会いをつくってもらいたいと思います。
すぐに何かに役立つ物ではない、しかし、自分の生き方を考える上で核になってくれるもの、それが「教養」というものです。読書を通じて自分を磨き、「教養」を身につける絶好の機会が夏休みです。学生諸君がひとまわり大きくなって後期の授業に戻ってくることを学長として期待しています。