ある日、親戚のおじさんが左利きになった。利き手交換の話。(前編)



まだ僕が子どものころ、親戚のおじさんが脳梗塞で倒れ、右半身が動かなくなった。

小心なのに豪快。
小さな体に大きなお腹。
やさぐれているのか、ピュアなのか。
ちょっと変わった、だけど憎めない、小さなおじさん。

職を転々とするような人だった。
でも、毎日が楽しそうだった。
毎晩、仕事が終わって家で日本酒を飲むことが生きがい。
赤ら顔に、吐く息が酒臭い、小さなおじさん。

何かにつけて色んな現場に連れて行ってくれた。
いつも、メチャクチャちっちゃい武勇伝を聞かせてくれた。
幼心に、かっこよく見えたものだけど・・・。

おじさんは、いつも笑顔で仕事をしていた。
今思うと仕事の楽しい部分だけを見せてくれていたような気がする。
幼心に、大人になったら楽しんで仕事をするんだ。
そんな気にさせてくれる、おじさんだった。
そんなおじさんが、ある日仕事先で倒れた。
脳梗塞だったらしい。
それまで何不自由なく過ごしていた日常が一変した。
それまで当たり前にできていたことの多くができなくなった。

それでも、おじさんは病院で必死にリハビリに励んでいた。

大変なはずなのに、僕の姿を見つけると、満面の笑みで、ピースをかましてた。

病院着姿で、右半身が動かず、車椅子に乗ったままでも、変わらず豪快で、小さなおじさんのままだった。

青いユニフォームを着たイケメン作業療法士の登場





あの頃のイメージです。

そのかたわらに、青いユニフォームを着た若いイケメンのお兄さんがいた。
なんていうか、「僕、人を笑顔にするのが生き甲斐なんです!」
と言わんばかりの、色白でたくましく、優しそうなお兄さんだった。

つきっきりで、おじさんのリハビリをサポートをしてくれていた。
それが作業療法士という職業だと知るのは、それから10年以上経ってのこと。

「なに、やってんの?」
「右手が使えんようになったけん、左手で生きようと思うてな。」
「え?」

要は、今まで右利きで、右手で箸を持ったり、はさみを使ったり、鉛筆を握ったりしていたのを、これからは、全部左手でやると。

なるほど。
ということで、その作業療法士でイケメンなお兄さんと、小さなおじさんと僕の3人で、左手で文字を書くゲームをやった。



誰が一番綺麗に書けるかゲーム。

想像以上に難しく。
というか、そもそも右手でも綺麗に書けないのに。

イケメンお兄さんが、懇切丁寧に教えてくれる。

縦線を書く。横線を書く。
曲線を書くために、円を書いて。
カタカナをなぞって。
ひらがなをなぞって・・・。
フォームがめっちゃ大事。

右手で書いても汚いのに、左手で書いた文字を作業療法士のイケメンお兄さんが、ものすごく褒めてくれた。

こうすればもっと安定するよ。
すごい!このまっすぐな線は、大人より断然上手だね。

もはや誰が患者なのか・・・。

おじさんはと言うと、めちゃくちゃ汚い。
そういえば、右手で書いても読めないくらい汚かったような。

「利き手交換」というリハビリ



大学に関わるようになって、作業療法士という職業を知って、つい最近「利き手交換」という言葉を知った。

ということで、いま夜の23時過ぎだけど、今は亡きおじさんを偲び、たぶん今は60歳を超えているであろうイケメンお兄さんを思って、やってみることにする!

何はともあれ、「利き手交換」をググって見た。
利き手交換とは
脳卒中や事故などで利き手が使えなくなった場合に、非利き手(もう一方の手)を積極的に訓練して、利き手のように使えるようにするリハビリテーションのこと。

なるほど。

どこの誰だか知らないけれど、懇切丁寧に「利き手交換」のやり方を指導してくれている介護老人保健施設コスモス苑さんのウェブにたどり着く。

ありがとうございます🙇
https://kaigo-cosmos.jp/activity/入所リハビリテーション/2022/10/08/31690

なるほど、フォームが大切と。
左手でうまく持てない場合は、右手でペンを持って、指と手首の位置を確認せよと。



夜中にタイマーで自撮りしてるシュールなオジ。iPhoneの画質が良すぎて、オジのシワが妙な臨場感と哀愁を醸し出してる(拡大禁止)。

後半は、百獣の王、武井壮さまの両利きになる方法から学ぶ実践編(後半へリンク設定)