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2022.12.2
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<令和4年度 第4回 図書館リレーインタヴュー 言語聴覚学科 講師 宮地ゆうじ先生へのインタヴュー>

こんにちは!図書館です。
12月になり、今年もあとわずかになりましたね。
12月は、クリスマスやいろんなイベントがあって楽しい月になりそうですね。
2022年の最後の月を楽しく過ごしてください。そして、新しい年を迎える準備もしてくださいね!

図書館では、図書館情報を積極的に配信する取り組みとして、
教員のおすすめ本の紹介を大学HPで配信することになりました。
今回は今年度の第4回目の配信になります。
第4回目は、言語聴覚学科 講師 宮地ゆうじ先生のおすすめ本の紹介します。

宮地ゆうじ先生、図書館リレーインタヴューへのご協力ありがとうございました。



学生の皆さんへ

 今回はさまざまな書物の中でも、「絵本」を取り上げてみたいと思います!

「おべんとうバス」真珠まりこ(著/文)ひさたかチャイルド

 大学生にもなると、なかなか絵本を手にとる機会は少なくなりますよね?
 ですが、これから皆さんは家庭を築き子育ての中で、あるいは保育士や幼稚園教諭、言語聴覚士など、
仕事の中で子どもたちと絵本を読む機会が増えるかもしれません。
私は言語聴覚士として、これまで言葉の発達が緩やかなお子さんに絵本を用いた言語指導(literature-based speech therapy)を
数多く行ってきました。そこで今回は、専門職の立場から「言葉を育む」という視点で、いくつかの絵本を紹介させて頂こうと思います。

「おおきなかぶ」A・トルストイ(著/文), 内田莉莎子(翻訳), 佐藤忠良(イラスト) 福音館書店

 言葉の療育をしていると、保護者の方から「やっぱり本を読ませた方がいいですよね?」「本をたくさん読ませると、言葉が増え、賢い子が育ちますよね?」とよく聞かれることがあります。
 確かに、既に自分で本を読むことができ、読書習慣を身につけているようなお子さんは、やはり語彙力や文章理解力が高い傾向があります。
 しかし、言葉がまだ話せないお子さんや発達がやや緩やかなお子さんの場合、たくさん本を読めば言葉が増えるわけではありません。
そもそも絵本に興味を持ってくれなかったり、読んでいる最中にどこかへ行ってしまうなんてことがよくあります。

Q.どのように読み聞かせをすればよいのでしょうか?
 どんなに感情豊かに絵本を読んでも朗読のような一方向的な読み聞かせでは、言葉の発達を十分に促すことはできません。
乳幼児の言語習得においては、「他者との相互的なやり取り」が何より重要であると考えられています。
 例えば、ペンシルバニア大学のバトラー後藤先生(2021)は、3歳のお子さんとその保護者が物語を一緒に見る際に、保護者が対話的質問をするグループと対話等をしないグループを比較し、4週間後に理解語彙テストを行った結果、成績に大きな差がみられ、「大人との相互のやり取りが、子どもの言語習得に非常に大きな役割を果たす」と報告しています。つまり、「言葉を育む」という視点で考えてみると、一方的に「読むだけ」「聞かせるだけ」の読み聞かせは少しもったいないのです。

【写真3 絵本を用いた対話形式の指導の様子】

 そこで、私は「対話形式の読み聞かせ」をおすすめしています。子どもとの対話を重視するため、物語の途中でも子どもが興味を持ったページで必ず読み聞かせを中断します。そして、登場人物が悔しがっている理由や解決策を尋ねたり、自分だったらどうするか、お母さん(または先生)だったら何を使うか等を互いに伝えあいます。
 たとえ、物語の途中で話題が脱線しても構いません。むしろ、子どもたちの想像力が刺激され、「伝えたい」という思いが強まったページは、相互的な対話を行う絶好のチャンスと考えてください。また、日常ではあまり使わないような言葉や普段経験しないような出来事についてもたくさんお話ししてみてください。

Q.どんな絵本を選べばよいでしょうか?
 子どもの興味や年齢(理解力)に合わせて選ぶことが基本ですが、私はできる限り内容はシンプルで、対話を引き出しやすい(絵本を介したやり取りができる)ものを選ぶようにしています。

「どっちがどっち?」いわいとしお(著/文) 紀伊國屋書店

 例えば、「どっちがどっち?」(作・絵:いわいとしお)という絵本には、お話し(文章)がなく、どのページにもよく似たイラストが2つ描かれているだけです。そのため、読み手は子どもたちの発達にあわせて自由に言葉を選ぶことができ、"アイスとマイク、うたうのはどっち?"のようなクイズ形式で絵本を読みすすめることができます。子どもたちは指さしでも答えることができるので、言葉が出はじめた低年齢のお子さんでも十分にやり取りを楽しむことができます。

「すっくのこんなときってなんていうの?」佐古百美(イラスト), 高寺夏代(著/文) ひかりのくに
「ゆっくのこんなときってなんていう?おそとであそぼう」佐古百美(イラスト), 高寺夏代(著/文) ひかりのくに

 「すっくのこんなときってなんていう?」(文:たかてら かよ、絵:さこ ももみ)は、同年代のお友だちと遊ぶ際に「この言葉だけは大切にしてほしい!」という言葉がたくさんつまった絵本です。自分から「いっしょにあーそーぼ!」と友達を誘ってみたり、「かして!」と言われて「いいよ!」と答えられるなど、場面に応じた言葉の引き出し方が工夫されており、ストーリー全体が対話形式で構成されています。

 簡単なやり取りが成立するようになれば、「だれが?」「どこで?」「どんな?」といった質問をしながら読みすすめられる絵本も良いと思います。

 以下に紹介する4冊は、同じ疑問詞が繰り返し使われており、疑問詞疑問文といわれる質問への応答を学ぶ最初の教材として、
とても適したものだと思います。

「ぱんだくんのおにぎり」いしかわ こうじ(イラスト), いしかわ こうじ(著/文) ポプラ社

 「パンダくんのおにぎり」(作:いしかわこうじ)は、おにぎりがコロコロと転がり、いろんな場所に隠れてしまいます。そのため、間違い探しのように「おにぎり、どこにあるかな?」と一緒に探しながら、繰り返し「場所」を答える練習ができる絵本です。

「だーれだ?」ヒド・ファン・ヘネヒテン(著/文), 竹内要江(たけうちとしえ)(翻訳)  パイ インターナショナル

 「だーれだ?」(作:ヒド・ファン・ヘネヒテン)は、動物の模様や断片的な特徴から隠れている動物をあてる仕掛け絵本です。ユニークな動物が次々と登場し、「誰の足だろうね?」と相談しながら読みすすめることができます。びっくりするような動物も出てくるので、ワクワクしながら次に出てくる生き物の話しで盛り上がります。

「へんなところ」大森裕子(著/文) 白泉社

 「へんなところ」(作:大森裕子)も間違い探しのように読みすすめられる絵本です。「どこがへん?」と尋ねると、「耳」と答えるだけでなく、多くのお子さんは「くまさんの耳がミカンになってる!」のように「誰の、何が、どのようになっている」のかを説明したくなるようです。言葉のつながりや表現を広げるためにも、よく使用する1冊です。

 この他にも、昔から読み継がれている絵本や物語を言葉の療育ではよく使います。大学図書館には、大阪薫英女子短期大学時代から
収集された絵本が数多く所蔵されています。ぜひ一度足を運んで、幼児・児童書に関する知識も広めてみてください。


                                             (言語聴覚学科 宮地ゆうじ)

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