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2023.12.1
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<令和5年度 第3回 図書館リレーインタヴュー 子ども教育学科 准教授 横島三和子先生へのインタヴュー>

こんにちは!大阪人間科学大学図書館です。
2023年も12月のみとなりましたね。みなさんにとって、2023年はどのような年だったのでしょうか。
わずかながらの2023年を楽しく元気に過ごしましょう!
 図書館では、図書館情報を積極的に配信する取組として、教員のおすすめ本の紹介を大学HPで配信しております。
今回は、第3回目の配信となります。第3回目は、子ども教育学科 准教授 横島三和子先生のおすすめ本を紹介します。横島先生が選書してくださったおすすめ本の表紙のイラストがとてもかわいらしくて癒されました。
横島先生、2回目の図書館リレーインタヴューへのご協力ありがとうございました。

  • (横島先生のお写真をアプリを使ってジブリ風に加工しております。)

1.”いま”そしてその先へ
 テクノロジーの進歩によって、私たちの生活や社会は急激に変化しています。最近では、セルフレジを導入するお店が増えてきました。あるファッションメーカーでは、商品を所定の場所に置くとICタグを読み取って瞬時に金額が表示され、スピーディーにお会計ができるようになっています。支払方法も多様になり、電子マネーやクレジットカードを端末にかざすだけで決済ができ、現金を扱うことが少なくなりました。
 自身の研究活動においても、テクノロジーを活用することで創造性や協働性を発揮する機会が増えました。考えやアイデアをイメージで記録したり、他者と共有してオンラインで交流したり、プロセスを残すことも容易になりました。Google Recorderを使って録音すると、音声ファイルのテキスト変換がリアルタイムで可能になるだけでなく、誤表記がほとんどありません。これはAIが文脈を読み取って変換しているからだそうで、その精度の高さには驚きました。AIといえば、ChatGPTやBing、Bardなど生成系AIも活用するようになりました。これまでの検索機能とは異なり、AIが関連する情報を判断して最適な回答をいくつか提案してくれるので、より深く考えるチャンスが増えたように思います。一方で、自身の知識やスキルも常にバージョンアップしていかなければならないと感じています。

 さて、皆さんの身の回りではどのような変化が起こっているでしょうか。今後さらに変化のスピードが早くなると言われていますが、5年後、10年後、20年後は、どのような社会になっていると思いますか。そんな未来を考えるヒントをくれるのが、山本康正さんの『きみたちは宇宙でなにをする?2050年に活躍するために知っておきたい38の話し』飛鳥新社(2023)です。書店を巡っていて、児童書コーナーで出会いました。2050年、私たちは宇宙旅行をしたり、テレパシーで会話をしてるかも?AIで自分に合った先生を選んで勉強できるかもしれないなど、起こりそうな未来を紹介しています。現実になる日はそう遠くないかもしれませんね。10代向けの本なので、内容は堅苦しくはありません。ぜひ未来に関心を持って読んでみてほしい1冊です。

2.未来の教室
 今年8月に実施したオープンキャンパスの子ども教育学科体験授業で、「20年後の保育所・幼稚園や小学校はどうなっていると思いますか?」と問いかけました。高校生からは「子どもの遊びの発達具合が目に見えてわかるような機能ができる」「一人ひとりにあった教育が受けられる学校になる」「今のように校舎、教室に集まらず、仮想空間で集まって授業などを受けることが出来る」「子どもたちが外遊びの時、AIロボットによって事故を未然に防げるのでは」「先生の仕事をAIが手伝っている」(ほぼそのまま転記)などの意見が返ってきました。どれもなるほどと感心するものばかりで、高校生の柔軟な発想に学生たちも驚いていました。

 浅野大介さんの『教育DXで「未来の教室」をつくろう』学陽書房(2021)を読むと、学校は大きく変わろうとしていることがわかります。一人1台端末や誰一人取り残さないといった令和の日本型学校教育の実現に向けて、文部科学省や経済産業省などの関係省庁と教育委員会、学校等が連携し、教育のシステムを本気で変えようとしています。本書のなかで、教育DX(デジタル・トランスフォーメーション)は、ホンモノの課題から始まる学校、そして、誰もがそれぞれ満足できる学校としての「未来の教室」に生まれ変わることなのだと考え、「未来の創り手」のために学校のシゴトの構造(生徒の学び方と先生の働き方)を大きく転換するのだと書かれています。未来の創り手としての当事者意識を次世代に培うことは、大人の私たちに課されている大事な役目だと思っています。一緒に未来の学校、未来の教育について考えてみませんか。

  • 「きみたちは宇宙でなにをする? 2050年に活躍するために知っておきたい38の話」山本康生著(飛鳥新社)
    「教育DXで「未来の教育」をつくろう」浅野大介著(学陽書房)

3.社会の問題は身近にある
 未来につながる”いま”解決しなければならない社会の問題はたくさんあります。SDGsは、持続可能な世界の実現に向けて2030年までに達成すべき具体的目標を示したものであり、ニュースでも街の中でもよく目にします。この地球で暮らし続けるための私たちの行動指針、羅針盤となっていて、社会で起こる問題に関心を持つきっかけになったという人もいると思います。みんなで知恵を絞って考え続けることが求められています。

 池上彰さん監修の『正解のない問題集 道徳編』Gakken(2022)を紹介します。ジャーナリストの池上さんは、テレビ番組にも出ておられ、ご存知の方は多いと思います。私は「週刊こどもニュース」のお父さん役で知りました。本書は、世の中には「これが正解」と言い切れないものがたくさんあるという前提のもと、家族や学校、社会の中にある身近な問題を取り上げ、8人のキャラクターがさまざまな意見を出し合って考える過程を読みながら、自分の考えを見つけていくことができます。問題の背景と関連する調査のデータも示されており、考えるヒントや根拠を見出すことができるように工夫されています。

 『思考実験ドリル』講談社(2023)は、パズル作家の北村良子さんによる著書です。常識、未来、命などの7つのテーマで42個の問題が用意されており、短いストーリーを読んで、なぜそう思うのかと考えながら自分なりの意見をまとめていく構成になっています。解説を読んでも、果たして選んだ答えが本当なのか、他にも考える視点があるのではないかと深く思考するような仕掛けになっています。私は、ここから先が本当の考える時間の始まりだと思いました。考え方は多数存在し、何を知っていなければいけないのか、何を優先するのか、どこに意義を見出すのか、それらによって事態をどう変えることができるのかという自問自答に陥る状態に誘われるからです。

  • 「正解のない問題集』池上彰著(Gakken)
    「思考実験ドリル」北村良子著(講談社)

 木戸優起さんの『ふたりのももたろう』ドリームインキュベータ(2023;2版)は、ももたろうを題材に2つの視点で描かれた絵本です。じゃばら構造の仕掛けになっており、ひっくり返すともう1つの物語が現れて、鬼に育てられたももたろうのお話しを読むことできるようになっています。物事の二面性を知り、異なる立場から考えるきっかけにしてもらいたいとこの絵本が作られたそうです。鬼の捉え方の違う2人のももたろうから見えてくるもの、それは、社会の問題ともつながっているように思います。

  • 「ふたりのももたろう」木戸優起著(ドリームインキュベータ)

 今回は5冊の書籍を紹介しました。ぜひ図書館や書店に出向いて、本との出会いを楽しんでください。そこから、自身のこと、身の回りのこと、社会のこと、未来のことに目を向け、関心を持ち、芽生えた小さな気づきを大切に育て、創造し続けてほしいと思います。

 最後に、執筆者の一人として携わった、安部孝編『教育原理(仮題)』(みらい)が2024年2月末頃に刊行されます。私は、小学校以降の教育について書かせていただきました。理論と実践の往還的な学びができる内容になっていますので、保育者・教育者を目指す方の役に立てればと思っています。

(子ども教育学科 横島三和子)

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